「申請サポート料」「コンサルティング料」名目で、行政書士報酬とは別建てで料金を受領している
この記事の概要
- こんなケース、ありませんか?
- どう整理されているか
- 改正後行政書士法第19条第1項「いかなる名目によるかを問わず」の趣旨
- 総務省通知(総行行第281号・令和7年6月13日)の解釈
- 「対価の実質」の評価方法
- 名目分離だけでは免責にならない
- 行政書士報酬の性質と支援業務委託料の違い
- 両罰規定による法人へのリスク
- 例外的に許容される構造はあるか
- リスクを下げるための代替構造:3つのパターン
- パターンA:書類作成業務は行政書士の対価として明確に切り出し、登録支援機関は支援業務固有の対価のみを受領する
- パターンB:料金体系を業務内容と対応させて明確化し、契約・請求書で実体を担保する
- パターンC:行政書士費用は依頼者と行政書士の直接契約・直接精算とし、登録支援機関は連絡補助に限定する
- おわりに:料金体系を分けて運用している登録支援機関のチェックポイント
- 料金体系の分離を仕組みで担保する
「弊社では透明性を重視して、行政書士の先生の費用と、当社の申請サポート料を別建てで請求しています。お客様への請求書も明確に分けていますので、行政書士法上の問題はクリアできていると考えています」──登録支援機関のコンプライアンス相談で、よく聞かれる説明です。
たしかに、料金の名目を分け、請求書を区分することは、商慣習としてはむしろ透明性が高い対応です。しかし、改正後行政書士法第19条第1項に明記された「いかなる名目によるかを問わず」という文言は、料金名目にかかわらず実質的に官公署提出書類の作成対価を受領しているかどうかを確認するための規定として整理されています。
本記事では、概要記事の事例5「『申請サポート料』『コンサルティング料』名目で、行政書士報酬とは別建てで料金を受領している」というケースについて、名目と実質の評価という観点から整理した上で、リスクを下げるための代替構造を提示します。
ポイント:本記事は、登録支援機関が正当な支援業務の対価を受領すること自体を否定するものではありません。特定技能制度における生活支援、相談対応、定期面談、支援実施状況の管理、受入れ企業との連絡調整などは、登録支援機関が担う重要な役割です。一方で、在留資格申請における書類作成、申請方針の判断、記載内容の選択、申請内容に関する専門的助言は、行政書士が専門家として責任を持って担うべき領域です。登録支援機関と行政書士がそれぞれの役割を尊重し、対価と責任の所在を明確にすることが、依頼者である受入れ企業や外国人本人を守ることにもつながるのではないでしょうか?
こんなケース、ありませんか?
「行政書士の先生に支払う費用と、当社のサポート料は別物ですから、それぞれ別建てで請求しています。請求書も領収書も明確に分けていますし、これ以上どう透明化すればよいのか分かりません」
「『申請サポート料』として、お客様向けの相談対応、書類整理、日程調整、申請進捗管理にかかる対価をいただいています。書類作成自体は先生がやっているので、これは別の業務に対する対価のはずです」
「『コンサルティング料』として、外国人雇用全般に関する助言料を別途いただいています。雇用条件の整理、社内体制の構築、生活支援設計など、申請とは別の業務ですから、行政書士法とは別次元の話だと考えています」
特定技能の受入れ実務において、登録支援機関の業務は、生活支援、相談対応、定期面談、支援実施状況の管理、受入れ企業との連絡調整など多岐にわたります。それらに対する正当な対価を受領すること自体は、事業として当然の構造です。
どう整理されているか
改正後行政書士法第19条第1項は、料金の名目を分けることそのものではなく、対価の実質に着目して評価する構造になっています。
改正後行政書士法第19条第1項「いかなる名目によるかを問わず」の趣旨
改正後行政書士法第19条第1項は、以下のとおり規定しています。
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三第一項に規定する業務を行うことができない。
改正前の旧第19条第1項は「業として」「報酬を得て」のみを要件としていましたが、改正により「いかなる名目によるかを問わず」という文言が明示的に追加されました。この追加は、料金名目にかかわらず、実質的に官公署提出書類の作成対価を受領しているかどうかを確認するための規定として整理されています。
総務省通知(総行行第281号・令和7年6月13日)の解釈
総務省は、改正の趣旨について以下のとおり説明しています。
行政書士や行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、「手数料」や「コンサルタント料」等どのような名目であっても、対価を受領して、業として、官公署に提出する書類等を作成することは違法であるという現行法の解釈を条文に明示することにより、行政書士や行政書士法人でない者による違反行為の更なる抑制を図ろうとする趣旨である。
この通知が示している重要なポイントは二つです。
第一に、「手数料」「コンサルタント料」という具体例を挙げている点。これは、少なくとも、こうした名目であっても実質的に官公署提出書類の作成対価を受領している場合には、行政書士法上の評価を免れないことを明確にする趣旨と整理できます。
第二に、改正法が「現行法の解釈を条文に明示したもの」と説明している点。つまり、改正前から、料金の名目を分けても実質が書類作成業務の対価であれば違法であるという解釈であり、改正によってこの整理がより明確化されたという位置づけです。
「対価の実質」の評価方法
では、「対価の実質」はどのように評価されるのか──ここが事業者にとって最も重要な論点です。
評価の指標として、以下のような要素が考えられます。
- 業務内容と対価の対応関係:受領している金銭が、具体的にどのような業務に対する対価か説明できるか
- 業務範囲の独立性:当該業務が、書類作成業務と切り離して合理的に区分できる業務か
- 業務の実態:書類作成業務との実質的な連動関係はないか(書類作成業務が増えるほど当該料金も増える構造になっていないか)
- 行政書士業務との結び付き:当該料金を支払うことが、行政書士による書類作成・申請取次を受けるための事実上の条件になっていないか
例えば、「申請サポート料」が、純粋に日程調整・申請進捗管理の対価であり、書類作成業務とは独立して合理的に説明できる業務の対価であれば、第19条第1項の射程外と整理し得えると思われます。
他方で、「申請サポート料」の中身が実質的に書類作成業務の対価(記載内容の判断、申請方針の検討、書類への反映等)を含んでいる場合、料金の名目を分けたとしても、改正後行政書士法第19条第1項違反として整理されるリスクがあります。
ポイント:料金名称として「申請サポート料」という表現を用いる場合には、その中身が書類作成、申請方針の判断、記載内容の選択等を含まないことを、契約書・料金表・業務マニュアル上で明確にしておく必要があります。可能であれば、「資料回収・連絡調整料」「支援実施管理料」など、業務実態に即した具体的な名称に分解する方が望ましいといえます。
名目分離だけでは免責にならない
「請求書を分けているから問題ない」という整理は、改正法の趣旨との関係で十分な根拠とはなりにくい、というのが現在の整理です。
改正法第19条第1項の「いかなる名目によるかを問わず」は、形式的な名目分離だけでは違法性を免れない構造を明確化した文言です。請求書、領収書、契約書を分けることだけでは、対価の実質が書類作成業務の対価と評価されれば、違法性を免れることは難しくなります。
ここで重要なのは、登録支援機関側の主観的な認識(「これは別の業務の対価のつもりだった」)ではなく、外形的に対価がどう評価されるかという観点です。
行政書士報酬の性質と支援業務委託料の違い
行政書士報酬と登録支援機関の支援業務委託料を明確に分離するためには、両者の性質の違いを理解しておくことが重要です。
行政書士報酬は、単なる作業代ではなく、行政書士が専門家として依頼者から直接依頼を受け、本人確認、申請内容の確認、書類作成、申請取次の可否判断を自らの職責で行うことに対する対価です。登録支援機関の支援業務委託料とは、性質も責任主体も異なります。
したがって、両者は契約・請求・業務実態のいずれにおいても混同しない設計が重要です。「書類作成料」を登録支援機関の料金体系に含めること、あるいは「申請サポート料」「コンサル料」名目で実質的に書類作成の対価を受領することは、両者の性質の違いを曖昧にする運用と評価される可能性があります。
両罰規定による法人へのリスク
改正後行政書士法第23条の3により、第19条第1項違反等について、行為者本人に加えて、法人にも100万円以下の罰金が科され得ます(罰則:改正後行政書士法第21条の2)。
⚠ 注意:「料金名目を分けているから大丈夫」という運用が違法と評価された場合、法人としての登録支援機関も処罰対象となり得る構造です。
例外的に許容される構造はあるか
「では、登録支援機関は申請関連のサポート対価を一切受領できないのか」──そうではありません。重要なのは、対価の実質が書類作成業務とは独立した、合理的に区分できる業務の対価であることです。
ケース1:書類作成と明確に切り離せる業務の対価
生活支援、相談対応、支援実施状況の管理、定期面談、各種制度の一般的説明、支援実施体制に関する社内研修などは、特定技能制度の受入れ実務において登録支援機関が担う固有の業務です。これらに対する対価は、書類作成業務とは独立して合理的に説明できるものとして、第19条第1項の範囲外と整理し得ます。
ただし、料金体系の中に、書類作成業務の対価が混入していないことが前提となります。
ケース2:登録支援機関固有の支援業務に関する運用支援の対価
外国人材の受入れに関する社内運用の整理、生活支援体制の構築、支援実施状況の管理方法の整備など、登録支援機関としての支援業務に関する一般的な情報提供・運用支援は、入管提出書類の作成業務とは別個の業務として整理し得る場合があります。
ただし、在留資格該当性の判断、申請方針の検討、申請書類に記載すべき内容の選択、理由書等の作成に踏み込む場合には、行政書士又は弁護士に切り出す必要があります。
ケース3:登録支援機関でもある会社が、所属機関として自社雇用の外国人について申請する場合
改正後行政書士法第19条第1項は「他人の依頼を受け」が要件です。自社雇用の外国人について自ら申請を行う場面では、形式上「他人の依頼を受けて」いるとは評価されにくく、論点の射程が異なります。ただし、登録支援機関の本来業務は他社の所属機関から委託を受けることであり、自社案件は限定的です。
つまり、「別建てで請求していれば大丈夫」ではなく、「対価の実質が、書類作成業務と独立した別個の業務の対価として合理的に説明できるか」が、評価の分岐点になります。
リスクを下げるための代替構造:3つのパターン
料金体系の整理によりリスクを下げるためには、以下の3つのパターンが考えられます。なお、いずれも形式だけでなく実態を伴うことが前提となります。
ポイント:職務基本規則第61条第3項は、申請取次行政書士が「申請人又は入管法上の代理人から直接依頼を受けることなく、第三者を介して依頼を受けた申請取次をしてはならない」と規定しています。本記事で「申請人又は入管法上の代理人」と記載するのは、この規律を踏まえた表現です。所属機関が当該手続における入管法上の代理人に該当する場合は、所属機関を含みます。
パターンA:書類作成業務は行政書士の対価として明確に切り出し、登録支援機関は支援業務固有の対価のみを受領する
構造:書類作成業務に関わる対価は、すべて行政書士の報酬として、申請人又は入管法上の代理人と行政書士の間で直接精算する構造に移行します。登録支援機関は、特定技能制度の受入れ実務において登録支援機関が固有に担う業務に対する対価のみを受領します。
ここでいう登録支援機関固有の業務とは、生活オリエンテーション、相談対応、定期面談、支援実施状況の管理、所属機関との連絡調整、行政書士から依頼された資料回収補助など、入管提出書類の作成や申請方針判断に踏み込まない業務を指します。
この場合、登録支援機関の料金体系には、書類作成業務の対価が一切含まれないことが前提となります。料金の積算根拠、業務マニュアル、契約書の業務範囲記載、請求書の摘要などを通じて、対価の実質が明確に説明できる構造を整える必要があります。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 構造的に最も明快で、コンプライアンスリスクが最小 |
| デメリット | 料金体系の見直し、業務範囲の明確化、契約書類の整備 |
| 向く規模 | 申請件数が一定以上で、料金体系の再設計が現実的な登録支援機関 |
パターンB:料金体系を業務内容と対応させて明確化し、契約・請求書で実体を担保する
構造:登録支援機関が受領する料金について、各料金が具体的にどのような業務に対する対価かを明確に定義し、契約書、料金表、業務マニュアル、請求書の摘要などで一貫して説明できる構造を整える方法です。
「申請サポート料」の中身を、例えば「書類整理(行政書士が作成した書類のスキャン・データ管理)」「日程調整(申請人・所属機関・行政書士間の連絡調整)」「申請進捗管理(申請後の状況フォロー)」など、具体的な業務に分解し、それぞれが書類作成業務とは独立した業務であることを実態として担保します。
⚠ 注意:このパターンを採用する場合でも、料金の中身に書類作成業務に踏み込む要素(記載内容の判断、申請方針の検討等)が含まれていれば、改正法第19条第1項のリスクは残ります。既存料金の中に書類作成、申請方針の判断、記載内容の選択等の対価が含まれている場合は、名称や請求書摘要を整えるだけでは足りず、料金体系そのものの見直しが必要です。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 既存の料金体系を前提にする場合でも、業務内容を分解し、行政書士業務に踏み込む対価を排除することで、説明可能性を高められる |
| デメリット | 業務範囲の精緻な定義と実態の継続的な担保が必要。料金の実体に書類作成対価が混入している場合は、料金体系そのものの見直しが不可避 |
| 向く規模 | 既に複数の料金項目を運用している中〜大規模の登録支援機関 |
パターンC:行政書士費用は依頼者と行政書士の直接契約・直接精算とし、登録支援機関は連絡補助に限定する
構造:行政書士の報酬については、申請人又は入管法上の代理人と行政書士の間で直接契約を締結し、直接精算する構造に移行します。登録支援機関が行政書士費用を取りまとめたり、立て替えたりすることもしません。
登録支援機関と行政書士の関係は、紹介・日程調整・資料授受の補助など連絡補助の範囲にとどめます。料金体系上、登録支援機関が受領するのは、登録支援機関固有の業務(生活支援等)の対価のみとなります。
なお、行政書士費用を登録支援機関が一時的に立て替える場合にも、上乗せや手数料を加えると、実質的な対価受領と評価されるリスクがあります。この点は、行政書士報酬の立替え・精算に関する別記事(事例6詳細編)で詳しく整理します。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 料金の流れが完全に分離され、改正法第19条の射程からの距離が最も大きい |
| デメリット | 依頼者側の事務負担、行政書士との直接取引体制の整備 |
| 向く規模 | 行政書士との関係性が確立しており、直接取引体制を整えやすい登録支援機関 |
いずれのパターンを採用するかは、規模・案件数・行政書士との関係性・コスト構造によって異なります。重要なのは、「料金の名目を分けているから大丈夫」という形式論を一度立ち止まって整理し、対価の実質が書類作成業務とは独立した業務の対価として合理的に説明できるかを確認することです。
おわりに:料金体系を分けて運用している登録支援機関のチェックポイント
申請関連の料金を別建てで運用している登録支援機関の経営者・コンプライアンス担当者の方は、以下の点を改めてご確認ください。
- 「申請サポート料」「コンサル料」等の対価が、具体的にどのような業務に対するものか、業務内容を分解して法人として説明できるか
- 当該料金の中に、書類作成業務に踏み込む要素(記載内容の判断、申請方針の検討等)が含まれていないか
- 当該業務が、書類作成業務と切り離して合理的に区分できる業務か
- 契約書・料金表・業務マニュアル・請求書の摘要が、料金の実質と一致しているか
- 料金の積算根拠を、第三者に対して合理的に説明できるか
- 行政書士報酬が、行政書士の専門的判断・書類作成・申請取次に対する対価として明確に位置づけられているか
- 登録支援機関の料金名称が、行政書士業務を含むように誤解される表現になっていないか
- 登録支援機関が受領する対価について、行政書士業務に踏み込まない具体的な業務内容、作業時間、成果物、責任範囲を説明できるか
- 行政書士と依頼者との直接の委任関係、本人確認、内容確認、最終判断のプロセスが確保されているか
- 登録支援機関が、行政書士の報酬額や業務内容を実質的に支配していないか
- 顧客向けの見積書・契約書・請求書・LPなどで、書類作成業務の提供主体が誰と表示されているか
これらを整理した上で、必要に応じてパターンA〜Cのいずれかへの移行を検討されることをお勧めします。
料金体系の分離を仕組みで担保する
行政書士報酬と登録支援機関の支援業務委託料の分離は、契約書面や請求書面の整備だけでなく、業務の流れと料金の流れの両方を整える必要があります。担当者の判断や個別の運用に依存すると、案件ごとに料金の実体が変動してしまい、料金体系の整合性が崩れるリスクが残ります。
RakuVisaは、登録支援機関・行政書士・所属機関・申請人本人の4者をシステム上で連携し、料金の流れも仕組みとして分離する設計を採用しています。
- 料金の分離が設計に組み込まれている:行政書士報酬と、登録支援機関のSaaS利用料が、請求書・領収書上で明確に分離される構造になっています
- 権限の分離:書類の自動生成・編集・最終確定を行う権限は行政書士アカウントに限定されており、登録支援機関のアカウントからは事実情報の提供のみが可能です
- 行政書士の実質的関与の担保:行政書士によるWEB面談(自動録画)と申請人本人の本人確認・同意確認が完了しない限り、電子申請の送信操作を行えない設計です
ポイント:RakuVisaは、産業競争力強化法に基づくグレーゾーン解消制度を通じて、総務省から「当該システムの提供は、行政書士法第1条の2第1項に規定する事務を業として取り扱ったとの評価まではされない」との回答を取得しています(令和7年2月6日付)。この回答は、当社の具体的な事業活動を前提として確認したものであり、あらゆる類似サービスの適法性を確認したものではありません。
RakuVisaで、行政書士法に配慮した申請業務体制を構築しませんか?
RakuVisaは、行政書士が必ず介在する設計により、行政書士の専門性と職責を尊重した申請業務体制の構築を支援します。

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